秋の夜空に泳ぐ「3匹の魚」!うお座とみなみのうお座の物語
秋の夜空には、魚(うお)の名前がついた星座が2つあります。
2匹の魚がリボンのような星の並びで結ばれた「うお座」と、
1等星フォーマルハウトを含む「みなみのうお座」です。
つまり、うお座の2匹+みなみのうお座の1匹で、秋の夜空には3匹の魚が泳いでいることになります。うお座の2匹は、星図では「北の魚」と「西の魚」と呼ばれ、南の空には「みなみのうお座」がいます。
今回は秋の夜空に泳ぐ、この3匹の魚についての話です。
さて、ここでちょっと不思議なことに気づきます。
「北」「西」「南」はあるのに、なぜ「東の魚」はいないのでしょう?
その答えを探していくと、話はギリシャ神話だけでなく、4000年ほど前の古代メソポタミアの星空へとつながっていきます。
うお座とみなみのうお座、古代メソポタミアとギリシャ神話の物語
まずは、北と西の2匹の魚がリボンで結ばれた姿をした「うお座」がどのようにして生まれたのか、有名なギリシャ神話を少し詳しくご紹介しましょう。
ある日、神々が川のほとりで楽しい宴会を開いていました。そこへ突然、巨大な怪物「テュポン」が襲いかかってきたのです。驚いた神々は、動物の姿に変身して大慌てで逃げ出しました。
この時、美の女神アフロディーテとその息子である愛の神エロスも、川へ飛び込んで魚に変身します。激しい流れの中で「絶対にはぐれてしまわないように」と、お互いの尾を1本の長い紐(リボン)でしっかりと結び合いました。この親子の強い絆の姿が、そのまま天に上げられて「うお座」になったと言われています。
しかし、実際の星図をよく見ると、不思議な謎が浮かび上がります。
なぜか2匹の魚(星図では「北の魚」と「西の魚」と呼ばれます)は、お互いにそっぽを向き、外側へ向かって必死に泳いでいるのです。はぐれないように結んだはずなのに、どうしてこんな不自然な向きをしているのでしょうか?そしてなぜ「東の魚」は存在しないのでしょうか?
夜空に浮かぶ「チグリス(ティグリス)川とユーフラテス川」
ここで、うお座をもう一度よく見てみましょう。
2匹の魚を結んでいるリボンは、V字のような形で夜空に伸びています。
実はこの形を、古代メソポタミアを流れるチグリス川とユーフラテス川の流れに重ねて見る考え方もあります。
チグリス川とユーフラテス川は、メソポタミア文明を育んだ二つの大河です。
そして面白いことに、現在のうお座付近にあたる古代の星の並びには、チグリス川やユーフラテス川の名前と結びつけられた星・星の集まりが記録されています。
もちろん、これは現在の星座のように「この星座はチグリス川、この魚はユーフラテス川」と公式に決められているという話ではありません。
古代メソポタミアでは、同じ星空が時代によって「つばめ」や「女神」、そして魚など、さまざまな姿で見られていました。
その長い星空の歴史の中で、地上を流れる二本の大河と、夜空に浮かぶ二本の流れを重ねて見る伝統があったと考えられているのです。
4000年ほど前の人々が見上げた夜空にも、チグリス川とユーフラテス川が流れていた――。
そう考えると、現在のうお座のリボンが、ちょっと違ったものに見えてきませんか。
わたしも以前、地図でチグリス川とユーフラテス川が合流するクルナ付近を見ていて、ふと思いました。
この場所から、北寄りにチグリス川、西寄りにユーフラテス川が伸びているように見えます。
そこで、うお座のV字の交点に自分が立ったつもりで夜空を眺めてみると……北に「北の魚」、西に「西の魚」の頭があるようにも感じられるのです。
古代の人々が本当にそう考えていたかは、はっきり分かりません。
でも、古代メソポタミアの大河と秋の夜空を重ねて想像してみるのも、星空散歩の楽しみ方の一つですね。
うお座の探し方
ペガスス座を目印にしてさがす
ペガスス座の詳細に関しては、以下をクリックして「秋の四辺形ペガスス座」を参照になさって下さい。
うお座は、主に3~4等級ほどの暗い星で形作られています。光害の多い都会では見つけにくい星座ですが、ペガスス座の四辺形を目印にすると探しやすくなります。
10月中旬、南の空高くに、四つの星がつくる大きな四辺形が見えるでしょう。
これが、ペガスス座の馬の胴体にあたる「秋の四辺形」です。
馬の頭は四辺形の西側へ伸びており、秋の夜空では、天頂側に前脚、地平線側に頭があるような向きに見えます。



図は、探す時の目印となるペガスス座とうお座、みなみのうお座の位置関係です(中央図)
では、ペガスス座の四辺形を目印に、うお座を探してみましょう。
四辺形の右上の星から左斜め下の星への対角線を思い浮かべ、その線をそのまま真っ直ぐ南東側(左斜め下)へ、対角線の長さの約1.5倍ほど延ばすイメージで目を向けてみましょう。
そのあたりから少し上に目を移すと、うお座の二匹の魚をつなぐリボンの交点にある星、アルリシャと言う星が見つかります(中央の図の赤丸)。
ちなみに、「アルリシャ」は、実はアラビア語でひもやロープを意味しています。
星の名前としてもこの2匹の魚を繋ぐリボンが非常に重要視されていることが分かります。
交点の星アルリシャを見つけたら、そこから伸びるリボンをたどってみましょう。
リボンは大きなV字を描くように広がり、北の魚はアンドロメダ座の方向へ、西の魚はペガスス座の頭の方向へと伸びています。
うお座の星は暗いため、最初から魚の形全体を見つけるのは難しいかもしれません。まずはペガスス座の四辺形を見つけ、そこから少しずつ星をたどっていくのがおすすめです。
みなみのうお座の探し方
みなみのうお座も、ペガスス座を目印にすると探しやすい星座です。
みなみのうお座には、明るい1等星のフォーマルハウトがあります。
ペガスス座の四辺形を見つけたら、中央の図の緑の矢印を参考に、南の空へ視線を移してみましょう。南の低い位置に明るい星が見つかれば、それがフォーマルハウトです。
フォーマルハウトを見つけたら、その周囲に目を向けてみましょう。少し暗い星々をつないでいくと、みなみのうお座の姿が見えてきます。
肉眼では星の並びが分かりにくいときは、双眼鏡で星々を一つずつたどってみるのも楽しいものです。
うお座の二匹の親? みなみのうお座に伝わる神話
みなみのうお座には、うお座の二匹と親子のような関係で結びつける、古代の星座伝承があります。
ある伝承では、シリアの女神デーケートーが湖に落ちたとき、大きな魚が彼女を救ったといわれています。その功績によって大魚は星座となり、うお座の二匹も、その魚の子どもたちとして星々の間に置かれたと伝えられています。
もちろん、古代の星座にまつわる物語にはいくつもの伝承があり、これだけが唯一の物語というわけではありません。
それでも、秋の夜空を見上げ、南の空に輝くみなみのうお座のフォーマルハウトと、少し離れた北の空にあるうお座を眺めていると、三匹の魚がまるで親子のようにつながっているようにも感じられます。
まとめ
今回は、遠い昔のメソポタミアに思いをはせ、ギリシャ神話も感じながら、「うお座」と「みなみのうお座」にいる三匹の魚を、少し違った角度から眺めてきました。
歴史や神話に思いをめぐらせながら、秋の夜空に広がる星座を探してみてください。
まずは、目印となるペガスス座の四辺形を見つけるところから始めましょう。
10月から11月の行楽シーズン、星のきれいな場所へ出かける機会があれば、昼間は紅葉を楽しみ、夜は星空散歩をしてみてはいかがでしょうか。
旅先には双眼鏡も忘れずに。いつもの街では見つけにくい星々も、暗い夜空の下なら、きっと新しい表情を見せてくれるでしょう。
星空をもっと楽しむために
星空をもっとじっくり観察してみたい方は、双眼鏡を使ってみるのもおすすめです。
双眼鏡は、使う場所や目的によって選び方も変わります。星空観察をはじめ、コンサートや野鳥観察など、用途に合わせた双眼鏡の選び方をこちらで紹介しています。
双眼鏡をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。




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